最高裁判所第二小法廷 昭和45年(オ)784号 判決 1970年11月20日
上告人 増田ゆき(仮名)
被上告人 岩井茂夫(仮名)
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人広兼文夫、同福永綽夫の上告理由一について。
相続放棄の申述の受理は、審判であつても、適式な申述がなされたことを公証する実質のものであるから、申述の受理に家事審判官の押印のみがあつてその署名または記名を欠くことは、妥当ではないにしても、受理を当然に無効とするものではなく、申述が申述者の真意に基づき適式になされたものであるかぎり、その実体上の効力を妨げるものではないと解するのが相当である。上告人の相続放棄の申述が有効になされたものと認めた原判決(その引用する第一審判決を含む。以下同じ。)に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。
同二について。
所論の各点に関する原判決の事実認定・判断は、挙示の証拠に照らして肯認することができ、右認定・判断の過程に所論の違法はない。論旨は、ひつきよう、原審の専権に属する証拠の取捨判断および右事実認定を非難するものであつて、採用することができない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 城戸芳彦 裁判官 色川幸太郎 村上朝一)